にんにくは命の泉

綺麗なにんにくの房私は子供の頃中国の北の方で育ったので、最初からにんにくには抵抗感がありませんでした。というよりは毎日にんにくを使った食事で育ったようなものです。周りの人はみんな生のにんにくをガリガリかじるのを楽しみにしているような人ばかりでしたから、にんにくの臭いを気にする人なんかいません。お互い様ですからね。でも、中國の食事に使われるにんにくはかなり匂うので、同じものを日本で食べたら、やっぱり人前に出るのははばかられます。にんにくは大好きですが、中華料理ににんにくを使う場合は、時と場所を考えないわけには行きません。

ところが、海外に行くようになって、フランス料理やイタリア料理ににんにくが欠かせないことを知りました。にんにくを使わないフランス料理やイタリア料理は考えられない、というくらいよく使われるのです。それなのに、にんにくの臭いをプンプンなどという人に会うことは滅多にありません。最初はこれが大変不思議でした。フランス料理の基本であるソースやフォン(だし)をつくるときは、必ずと言っていいほど、にんにくが使われます。イタリア料理もその点では同じです。それなのに、なぜ匂わないのかしら?その答えは、アーリオ・オーリオにありました(イタリア料理の場合。フランス料理ではミルポワ、スペイン料理ではソフリットがこれに相当します)。にんにくをオリーブ・オイルで炒めて、その香りをオリーブ・オイルに移せば、それでできた料理を食べても匂わないのです。(アーリオ・オーリオのレシピはここをクリック)初めはそれが信じられませんでしたが、イタリア料理やフランス料理を自分で作るようになって、それが本当であることが確信できました。
紫色した西洋のにんにく
欧米ではパープル・ガーリックもポピュラー

西欧社会では、こうしてにんにくを抵抗なく社会生活に取り入れる方法を早くから知っていたわけです。エネルギー源としてのにんにく、料理をおいしくする陰の主役としてのにんにく、天然のワンダー・ドラッグ(特効薬)と言っていいほどいろんな病気の予防効果を持つにんにく。にんにくは地中海沿岸の住民にとっては、命の泉といえるほど日常の生活とは切っても切れない存在だったのです。イタリアの老人たちが、どこの国の老人たちよりも、生き生きと人生を謳歌しているようにみえるのも、若い頃からオリーブ・オイルとにんにくを欠かさない食事をしているからかも知れません。にんにくの成分であるアリシンには、非常に広範な範囲の病原菌に対する抗菌効果があると言われています。ビタミンも豊富、そして心臓病のような血管系の病気の予防にも強い効能があることが分かっています。悪いコレステロールを下げ、強い血管を作る作用も期待できます。

 にんにくを美味しく食べる。これは地中海料理だけが叶えてくれる最大の歓びです。このブログでは、(デザートなどを除く)殆どのレシピでにんにくを使っています。もしあなたが、にんにくは臭い、味がきつい、などといういわれのない「偏見」をまだお持ちなら、このブログのレシピが、あなたにとって「目からウロコ」の機会になることは間違いありません。(右側にこのブログが推薦するスペイン産の紫にんにくの広告を掲載しています。国内産なら青森県産がお勧め。輸入されている数は少ないですがイタリア産のにんにくも上質です。)