おもてなしレシピ~本格派ティラミス R#042

本格派ティラミス
食事会の締めのドルチェはティラミスです。本格派と銘打ったのには理由があります。最近は、多くの喫茶店やレストランでティラミスというメニューをみかけますが、その中には、生クリームの代わりに卵白メレンゲを、マスカルポーネの代わりに安価なクリームチーズを使った「ティラミスもどき」をみかけることが少なくないのは本当に残念です。本来のティラミスの味を知ってもらいたいと、本格的なレシピで手作りしました。なお、多くのお店がやっているように、ティラミスをセミフレッド(半ば凍らせた状態)で出すのは、絶対に間違いだと思います(その方がサービスしやすいからでしょうけど)。ティラミスをセミフレッドで出すと、折角のマスカルポーネの味が消えてしまいます。ティラミスは、とろり、ふんわりとしたクリームの舌触りが命です。保存のために凍らせても、お客様に出すときは解凍した状態で出しましょう。確かに、容器から出して切り分けるのは難しい!でも、形が少々崩れも気にしない。なんといっても大事なのは味ですから。


材料:幅12センチ、長さ19センチ、深さ6センチのタッパー・ウエアに合う量
生クリーム 300ml
マスカルポーネ・チーズ 150g
卵黄 4個分
グラニュー糖 35g
フィンガー・ビスケット 20本
エスプレッソ・コーヒー 適量
ブランデー 小匙1
ココア・パウダー 適量


1.まず最初にクレマ・ディ・マスカルポーネを作る。ボウルにマスカルポーネ・チーズを入れ、卵黄を加えて泡立て器でまぜる。泡立て器をゆっくり一方向に回しながら混ぜていると、次第にふんわりとした感じのクリームになってくる(写真1)。写真のように表面が滑らかになっているはず。泡立て器を持ち上げると、とろりと落ちるくらいの感じ。

2.別のボウルに生クリームとグラニュー糖を入れ、泡だて器を使って今度は勢いよく撹拌する。気温が高いときは、氷を入れた容器に当てながら撹拌しないとなかなか固まらない(写真2)。あるいは、手持ち式の電動ミキサーがあれは、それを使う。楽に泡立てられる(写真3)。


3.泡立て器を持ち上げたときに、かろうじて落ちてこない程度に固くなったら、そこで止めること(写真4)。泡立てすぎるとキメの粗い仕上がりになるので注意。

4.泡立て器をスパチュラ(ゴムまはたシリコンのへら)に持ち変え、生クリームの入っているボウルに、1.の中味を2~3回に分けて入れながら、ゆっくりと切るように混ぜて行く(写真5)。


5.写真6は全部入れ終ったところ。しばらく、切るようにして混ぜていると、写真7のような滑らかな状態になるはず。これでとろり、ふんわりとしたクレマ・ディ・マスカルポーネのできあがり。これだけでも立派なデザートだ。


6.エスプレッソ・コーヒーを用意する。濃いめのインスタント・コーヒーでもよい。コーヒーには少量のブランデーを混ぜる(写真8)。他のリキュールでもよい。

7.蓋のできる容器にフィンガー・ビスケットを隙間がないように並べ、その上に、6.のコーヒーを刷毛で塗る。フィンガー・ビスケットの色が変わる程度でよい(写真9)。

8.5.のマスカルポーネ・クリームを、フィンガー・ビスケットの上に静かに移し入れ、表面を平らにならす(写真10)。このとき、あまりいじくりまわさないこと。クリームのふんわりさが失われる。


9.クリームの上に同じようにフィンガー・ビスケットを並べ(写真11)、コーヒーを塗る。その上からココア・パウダーを茶漉しのようなものでまんべんなく振りかける(写真12)

10、出来上がったティラミス(写真13)は蓋をして冷蔵庫で5時間以上冷やせは、食べごろになる。客用に出す場合は、下の「メモ」の記事を参照。

メモ
ティラミスを9.の出来上がった状態で、形を崩さずに容器から切り出すのは非常に難しい。お客用など、できるだけ形を崩さずに切り出したい場合は、出来上がったティラミスを、容器ごと冷凍庫に移し、2~3時間冷やして半凍結の状態にする。その状態で料理用のパテナイフなどを使って客用皿に切り出せば、形よく切り出せる。但し、半凍結の状態だと、マスカルポーネ・クリームの本来の風味が感じられないので、必ず一旦冷蔵庫に戻し(あるいは常温において)解凍した状態で食卓へ出すこと。半凍結の状態だと、ざらついた舌触りで、折角のふんわり、とろっとしたマスカルポーネ・クリームの美味しさが味わえない。

ティラミスに使うマスカルポーネ・チーズは、イタリア産を使うこと。

リニューアル情報:このレシピは2020年5月29日に調理中の写真を差し替え、配列を横並びに変更しました。

トリビア

ティラミスのルーツ

ティラミスはイタリアのヴェネト州の地方料理から始まったドルチェです。その地方の家庭で作られている、よりオリジナルに近いティラミスは、生クリームを使わず、その代わりに、フィンガー・ビスケット(サヴォイアルディともいう)を幾層にも重ね、その間にマスカルポーネ・チーズと卵黄で作ったマスカルポーネ・クリームを挟んであります。そのフィンガー・ビスケットは、このレシピのようにコーヒーを塗るのではなく、マルサラ酒やアマレットのような甘口のワインにたっぷりと浸けたものを使うのだとか。今回の食事会のお客様の女性方は、たまたまお酒に弱い方が多かったので、コーヒーを塗る方の(家族向きの)レシピで作りました。もともと、フィンガー・ビスケットは、イタリア統一の中心となったトリノのサヴォイア家の名前がついているお菓子です。その歴史を考えれば、卵白メレンゲではなく、やはりフィンガー・ビスケットを使うのが正統派といえるでしょう。なお、イタリアでは最近は、このレシピのように、マスカルポーネ・クリームに生クリームを加えるバリエーションも多く見かけるそうです。