以前の前書きから

ここに掲載されている記事は、該当のレシピから削除された前書きをこのページへ再録したものです(2024年4月6日削除)。 

R#100 おもてなしレシピ~鯛の地中海風、プロバンス風ビネグレット・ソースで

とうとうこのブログもレシピの数が100に到達しました。2014年3月に最初のレシピをアップロードしてから3年4か月ほどかかったことになります。その途中で何度も息切れして中休みしたりしましたが、その度に夫に後押しされてようやく今日まで続けることができました。その間、このブログにアクセスしてくださった皆さんに心からお礼を申し上げたいと思います。100番目の節目ですので、いつもより手の込んだレシピと思い、いろいろ候補を考えましたが、結局これまであまり取り上げてこなかった魚を使ったレシピをと選んだのがこの鯛の地中海風です。イタリアで地中海風と言えば、ジェノアのあるリグーリア州の料理を指すとか。でも、私が今回紹介するのは、昔地中海のどまんなかにある島、マジョルカ島に行ったときに海辺のレストランで食べた鯛の料理がとてもおいしかったのを思い出して、それに近いものをと再現してみた一品です。

マジョルカ島での私
むろんあのときのような、その日の朝近くの漁師が釣り上げたばかりの生きのいい天然ものの鯛とは、素材の質が比べ物にならないのですが、鯛に合わせるソースにこだわることで、最近入手が容易になった養殖の鯛でもかなりいい線までいけたと思います。近くのスーパーにゆけば、このような尾頭付きの鯛がいつでも大変安く手に入ります。少なくとも魚に関しては、日本に住んでいることは、世界中のどこよりも恵まれているのかもしれません。それなのに最近の若い人たちの魚離れはほんとうにもったいないと思います。もっともこのブログも魚介類の取り上げ方は多いとは言えないので、あまり偉そうなことは言えませんが。プロバンス風のビネグレット・ソースは鯛やいさき、すずきなど白身魚のオーブン・ローストに最高に調和します。このソースを憶えたら、白身魚の味付けにはもう別の調理法は必要ないという気がするほど。ぜひ魚丸ごとの料理に挑戦してください。生の魚の調理は苦手という方も(実を言うと私もその一人)、大抵の大きなスーパーでは頼めば下処理は快く引き受けてくれます。今回の鯛も頼んでえら、内臓、うろこを取り除いてもらいました。もちろん無料です。こんな便利なサービスがあるなら、もっともっと魚を日常の食事に活用してみたと思うのは私だけでしょうか。
R#097たことじゃがいも、マッシュルームのタパス

スペインのバールで出るタパスの定番、たことじゃがいも、マッシュルームのタパスです。とくに変わった調理法はしていないので、ここに書くことはあまりありません。その代わりに日本に輸入されているたこの半数以上を占めるモーリタニア産のたこを見るたびに思いだす、カナリア諸島へ旅した時のことを書きたいと思います。カナリア諸島といってもご存じない方もおられるかもしれませんが、大西洋の西アフリカ沖に浮かぶ一群の島のことで、地理的にはモロッコと西サハラの沖合に位置していますがスペインの一部です。たこを介して日本と縁が深いモーリタニアは西サハラのすぐ南です。そのカナリア諸島の中のテネリフェ島で私の夫が勤める多国籍企業の会議があり、夫に同伴してはるばる日本から参加したのでした。テネリフェ島は一名大西洋のハワイと呼ばれるリゾートの島と聞いて、ハワイ大好きな私はどんなとこころかぜひ行ってみたかったのです。

テネリフェ島での私。プエルト・デ・ラ・クルスにて
 スペイン本土の南端マラガで飛行機を乗り換え、そこからさらに空路で数時間かかったと思います。飛行機の窓から眼下の荒涼とした大地と荒々しい海岸の風景を見下ろしていると、夫があれが日本へかって沢山のたこを輸出していたモロッコ(今はモーリタニアがそれに代わった)という国だよと教えてくれました。そこからさらに大西洋の上を飛んでようやくテネリフェ島に着きます。火山とそれを囲む海、カナリア椰子や名産のバナナのような熱帯系の植物に覆われたテネリフェ島は、確かにハワイと似たところが沢山ある観光の島でした。スペインの自治州で、西アフリカの沖合にありながらEUの一部でもあります。そこで出会ったホテルの女性の給仕長さんから、こんな言葉を聞いたのを憶えています。「失礼ですが、お客様は日本人でいらっしゃるんですね。仕事柄、私は大勢の日本の男性の方とはお目にかかりますが、日本の女性の方にお会いするのは初めてです。ぜひ、カナリア諸島のすばらしさを日本に伝えてください...」聞いてみると、同じカナリア諸島のグラン・カナリア島にあるラス・パルマスという港は、日本から来る数多くのトロール船や日本へモーリタニア産のたこを運ぶ船の補給・休泊港になっていて、日本の漁業関係者の男性をよくみかけるそうなのです。でも、女性と会ったのはこれが初めてということでした。もうだいぶ昔の話なので、今では日本人の女性も珍しくはないでしょうが、当時はそんなこともあったのです。カナリア諸島でもたこはとれるそうですが、輸出するほどは多くないとか。滞在中スペインのお友達に招待されて行った海辺のレストランで、長さがなんと1メートル半くらいある大きなお皿にあふれそうなほどさまざまな海の幸が盛られた豪快な料理が出て、これにもビックリしたことを憶えています。でも、そのなかにたこはなかったような気がします。確か、ホウボウに似た魚や、ロブスター、鯛やアジに似た何種かの魚、それに貝類だったと思いますが確かではありません。当時は魚料理にはあまり関心がなかったので。それはともかく、今でもスーパーなどでモーリタニア産のたこを見ると、テネリフェへ行った時のことをつい回想してしまうのです。今回タパスに使ったたこもモーリタニア産でした。あのうんざりとするほど長かった旅路を、このたこも同じようにはるばると運ばれてきたと思うと、よけい感銘みたいなものが沸いてくるのです。
R#070おもてなしレシピ~イベリコ豚の骨付きロース・グリル、アンチョビ・ソース

久しぶりのおもてなしレシピのアップロードです。事情があって新しいレシピの追加が遅れている間に、このブログのページ閲覧回数が1万回を突破しました(今年の3月15日)。2014年3月19日に最初のレシピを公開してから約2年かかった訳です。料理ブログでは決して早いとはいえませんが、このブログのユニークな目的からすれば、意外と早かったとも思えるのです。なによりもまず、このブログにアクセスしてくださって方すべてにお礼申し上げます。

インターネットにはそれこそ天空の星の数より多くの料理サイト、ブログがありますが、そのほとんどは日常のおかずのアイディアを読者に提供することを目的としています。手に入れやすい食材で、手軽に、手慣れた方法で作れる料理を作りたい人たちのための料理サイトです。それに対し、このブログは最初から、本格的な地中海料理を、できるだけ詳しく、材料や作り方に手抜きをせずに紹介しようと努めてきました。ですから、このブログを繰り返しご覧になってくださる方は、他の多くの料理サイトをブラウズする大多数の方々とは、きっとはっきり異なった目的でご覧いただいていると思うのです。そのような本格志向のみなさんの期待により忠実に応えるため、手を抜かない、材料を省かない、できるだけ現地風の調理法に従う、そしてなによりも決して和風に流れないという、このブログのこれまでの路線を今後も堅く守って行く積りです。そして、いつまでも日本の料理ブログの中でもユニークな存在であり続けたいと願っています。

今回でこのブログに掲載したレシピの数も70に達しました。でも実を言えば、このブログに載せたいけど主な食材のどれかが日本では手に入りにくい(あるいは全く手に入らない)ために、掲載を思いとどまったレシピの数は公開したレシピの数よりも多かったのです。これほど世界中が貿易のネットワークでつながっていても、やはり地中海沿岸諸国からすれば、日本は地理的だけではなく、文化的、歴史的に遠い国なんだなと思い知らされたことさえなんどもありました。でも、私も私を陰で支えてくれている私の夫も、決して悲観するどころか、食材の流通環境はどんどんと良くなっていくと確信しています。2年前にはまる夢だった地中海料理に必須の食材が、不定期とはいえ、近くのスーパーや輸入食品専門店並ぶことが次第に増えてきています。あと、何年かすれば仔牛肉や生ソーセージ、日本ではあまりなじみのない牛や子羊の部位のブロック、ロースト用のターキーやジビエの素材なども決して珍しいものではなくなる日が来るかもしれません。そんな日が遠くないことを夢見て、我が道に従い、着実にこのブログのレシピを増やしてゆきたいと思っています。

今回のレシピは、たまたま近くのスーパーでみつけたスペイン産のイベリコ豚の骨付きロース肉のグリルです。それも1本が250gという珍しい程の大きさでしたが、スペインのタパスのようにワインの友として召し上がるなら、1本150g位を超える大きさなら充分楽しめます。重量の中には当然食べられない骨の重さも含まれているので、ディナーのメインとして出す場合は、一人分250gでも決して量的におおすぎることはありません。これは骨付きの肉類全体に言えることですけど。