2015年7月2日木曜日

おもてなしレシピ~手軽に作れるクリスマス・パネトーネ R#052


イタリアに限らず西ヨーロッパやアメリカ大陸でもクリスマスや新年にパネトーネが作られます。でも発祥はイタリアのミラノとか。パネトーネの語源は一説には「でっかいパン」を意味するイタリア語なんだそうです。そういえば、高さが30センチもありそうな大きなパネトーネがクリスマスの店頭に並んでいるのを見たことがあります。現在のように捏ね工程と発酵(一晩から24時間!)に長時間をかけてフワフワのドーム型のパネトーネを作るのが主流となったのは20世紀に入ってからだとか。でも一般の家庭ではそんな時間と労力をかけられない場合も多いと思います。イタリアのメーカーから毎年億という膨大な数の既製品のパネトーネ(パンドーロを含む)が市場で売られていると言われれているのも、一つにはそんな背景があるからかもしれません。我が家でも今年のクリスマスに久しぶりにパネトーネを作りました。ふんわり、しっとりのパネトーネって上手に作るのは結構難しいケーキです。生地の捏ね方から成型まで味と外観に凝るならブーランジェ並みのテクニックが必要とさえ思える程。でも、もっと手軽に基本的な作業だけでもそこそこ美味しいパネトーネは作れます。確かに見栄えは少し見劣りしても、味がよければすべて良し。以下は家庭で手軽に作れるドライフルーツたっぷりのクラシックなパネトーネ・レシピです。


材料:(直径12センチ,高さ10センチの紙製パネトーネ型2個分)
強力粉 250g
薄力粉 50g
ドライ・イースト 6g
牛乳 100ml
卵黄 1個分
全卵溶き卵 2個分
きび砂糖 50g
無塩バター 100g
ドライ・フルーツ・ミックス175g
ラム酒 100ml
海塩 5g
仕上げ用バター 適量

作り方
1. パネトーネを作る少なくとも3日前ぐらいに、ミックス・ドライ・フルーツ(好みの組み合わせで)をラム酒に浸しておく。

2. 無塩バターを常温に戻し、写真1のようなサイズに切り分けておく。ドライ・フルーツも常温に戻し、保存中に吸い込み切れなかったラム酒を、濾し網で濾すか手で絞って水気のない状態にする(写真2)。これをやらないと発酵時に生地のふくらみ方が足りないことがあるので重要な作業。牛乳も常温に戻しておく。大きめのボウルに強力粉、薄力粉、ドライ・イースト、塩,きび砂糖を入れてよく混ぜ合わす(写真3)。

3.別のボウルに卵黄と溶き卵を入れ、よくかき混ぜる(写真4)。牛乳を加え、混ぜたら粉の入ったボウルに少しずつ注ぎ入れる(写真5)。スパチュラでよく混ぜ合わす。ボウルの中身が軟らかい塊になって来たら、
素手を使ってしばらく捏ねる。全体がひと固まりの生地になったら、捏ね台の上に取り出し、力を入れてしっかり捏ねる(写真6)。少なくとも5分間くらいはがんばって捏ね続けたい。


4. 生地を捏ね続けていると次第に粘りが出てくる(写真7)。バターを2回に分けて練り込む(写真8、9)。練り込んだバターが塊のままだったら手で潰して完全に生地に溶け込ます。



5.生地の表面がだんだん滑らかになってくるので、生地の一部を両手で引っ張ってどこまで薄く引き伸ばせるか試す。生地の向こう側の指の形がわかるくらい薄くしても生地が破けなければ捏ね方が十分なしるし(写真10)。

6.ドライ・フルーツ・ミックスを2回に分けて生地に練り込む(写真11,12)。


 7.生地をボウルに戻し(写真13)、ラップしてオーブンの発酵機能を使い40度Cで30分前後発酵させる(一次発酵)。生地の大きさが倍になるまで。倍に膨らんだ生地をボウルから取り出し上面を手で軽く叩いて空気を抜く(写真14)。スケッパーを使って生地を半分に分割し、それぞれを両手で包み込むようにして丸い形に成型する。出来た二つの球形の生地を用意したパネトーネ型の中に入れる(写真15)。オーブンの発酵機能を使い、40度Cで生地の大きさが倍になるまで発酵させる(二次発酵)。今回の場合60分で倍の大きさになった。生地の捏ね具合、気温・湿度、材料の特性により二次発酵に要する時間は30分から90分の幅がある。時間がかかってもあせらずに生地が倍の大きさに膨らむのを待つこと。ここまでレシピ通りやっていれば、必ず膨らむはず。途中で切り上げて不十分な発酵で済ますと、最後にオーブンで焼くときに膨らみの足りないパネトーネになることが多い。

8.オーブンで焼く前に、ナイフを使って生地の表面に十字の浅い切り込み(クープ)を入れる(写真16)。クープに細く切った仕上げ用のバターを挿入する(写真17)。予熱あり180度Cのオーブンで30分前後焼く。出来上がりが写真18くらいに膨らんでいれば成功だ。焼く時間はその日の気温や使う機器によって変化するので適宜調整する。表面に焼き色が付き、竹串を中心部に底まで刺してみて何もついてこなければ焼き上がっている。

9.仕上げ用のバターをパネトーネの表面に塗る(写真19)。ケーキクーラーで粗熱を取った後、ナイフで縦に切ってサーブする(写真20)。捏ねにあまり時間をかけていないので日持ちは多少悪いかもしれない。大きなタッパーウェアのような容器に保存して少し硬くなったら、電子レンジで温めがお勧め。アイスクリームを添えたり、クレマ・ディ・マスカルポーネ(作り方はここをクリック)を添えたりするのがイタリア流だ。

メモ:
パネトーネを作るのに高価なパネトーネ・マザーを勧めるレシピがあるのは、イタリアで長年受け継がれてきたパネトーネ製作に使われる専用の天然酵母が含まれているから。利点はドライイーストを使う場合より、しっとり度が高く日持ちがいい(カビが生えにくい)パネトーネができる。そればかりでなく膨らむ度合いもフワフワ度もドライイーストより優れている。長い間味が落ちにくいと言う人もいる。欠点は家庭で作る量ではドライイーストに比べ酵母の値段が高くつくこと。発酵に要する時間もドライイーストより長くなる。天然酵母は温度に非常に敏感なので素人は失敗しやすい。このレシピではドライイーストを使ったが、どちらがいいかはパネトーネを作る人の食に対する哲学次第といえるかもしれない。

リニューアル情報:このレシピは以前あった「クリスマスの残り物を美味しくグリル」を2023年12月29日に差し替えたものです。