おもてなしレシピ~パンナコッタを洋梨の赤ワイン煮に添えて R#77

久しぶりにドルチェを作ってみました。パンナコッタはイタリアの代表的なデザートですが、日本では滅多にお目にかかれないような気がします。材料も手に入りやすいし、作るのも簡単、そしてなによりも口当たりが清々しく、さっぱりとした甘さで万人向きだとおもうのですが、なぜか人気が出ないのは不思議ですね。今回は今の季節に沢山出回っている洋梨の赤ワイン煮と合わせてみました。でも主役は洋梨ではなく、パンナコッタなんです。なぜって、洋梨の赤ワイン煮はよく知られているので、パンナコッタをもっと作って貰いたいから。それに、このブログは地中海料理のブログですもの。パンナコッタだけを作る場合は、一人分ずつ小さめのカップに流し込んで固める方が扱いやすいです。パンナコッタとはイタリア語で生クリームを熱するという意味だとか。材料は生クリーム、グラニュー糖、板ゼラチン、バニラ・オイルのたった4品だけ。たったこれだけの材料でこんなに美味しいものを考え出すなんて、本当にイタリア人には美食の遺伝子が伝わっているのかもしれません。なんといっても、あのアイスクリームを発明したのもイタリア人ですからね。

ここで洋梨について一言。最近は洋梨もラ・フランス一色ではなく、改良種のル・レクチェとか、バートレット、高級品種のレッド・バートレット、オーロラ、メロー・リッチなど変わり種もすこしずつ市場に出てくるようになりました。でもラ・フランスが圧倒的(栽培面積で65%とか)に多いのはうなずけません。なぜってラ・フランスが一番おいしいとは言えないからです。洋梨の本場であるフランスではもうラ・フランスは栽培されていないという話しを聞いたことがあります。もっとおいしい洋梨の品種が沢山出回っているからです。日本の市場も海外並みにもっと品種にバラエティが増えて欲しいと思います。ラ・フランスだけが洋梨じゃない、もっとおいしい他の種類の洋梨を応援したいと思っているのは私だけでしょうか。

とはいえ、この洋梨のワイン煮には、木熟の皮が黄色味を帯びたラ・フランスなら結構美味しく出来ます。赤ワイン煮にしてしまうと、洋梨の品種の違いはさほど目立たなくなるので。

材料

[パンナコッタ](出来上がり、15センチx10センチ位の浅めのバット、2杯分)
生クリーム 350ml
グラニュー糖 40g
バニラ・オイル 適量0(数振り)
板ゼラチン 6g

[洋梨の赤ワイン煮](4人分)
洋梨 2個
赤ワイン(甘口) 250ml
グラニュー糖 大匙3
シナモン・スティック 2本
クローブ 小匙半
レモンの皮(すりおろす) 適量

作り方

[パンナコッタ] 



1.板ゼラチンをたっぷりの水の中で軟らかくする。夏の季節なら少し氷を入れた冷水の方が早く軟らかくなる。形が崩れたらすぐに水からとりだしておく。

2.ミルクパンのような鍋に生クリームとグラニュー糖を入れ、中火で熱しながらゆっくりかき回して砂糖を完全に溶かす(写真A)。料理用の温度計があればそれで確認し、55度前後になったら火を止める(写真B)。温度計がない場合は、生クリームが鍋に接している周辺が泡立ち始めたら50度ぐらい。そのあたりで火をとめる。絶対に沸騰させないこと。沸騰させると、この後、板ゼラチンを入れたときに、生クリームとゼラチンが分離して二層に分かれてしまうので注意。
板ゼラチンを入れてよくかき混ぜる。板ゼラチンが完全に溶けたら火からおろす。氷水を入れたバットの中で鍋を冷やす。このときもスパチュラを動かして混ぜ続ける(写真C)。しばらくすると、つやがでてかすかにとろみが出てくる。バニラ・オイルを入れて更によくかきまぜる。


3.好みの容器(バットかデザート用のカップ)に流し入れて(写真D)、冷蔵庫で2時間ほど冷やせばムース状に固まってくる(写真E)。冷蔵庫で3日間くらいは保存できるが、時間がたつとバニラの香りが薄れてくるので、できれば作成後すぐに食べることを薦める。冷蔵時間が長くなると次第に固くなる傾向があるので、3日ほどしてから食べるような場合は、生クリームの一部(50~70ml)を牛乳に代えて作る。作り方は上記と全く同じ。



[洋梨の赤ワイン煮]
1.洋梨は皮を剥き、縦に2つ割にして種の部分をくり抜く。堅い部分はスライサーの横についているジャガイモの芽取りを使うとやりやすい(写真1)。

2.レモンの皮だけをおろし器などでおろす。

3.洋梨を重ねずに広げて入れられる大きさの鍋に、まず赤ワイン、グラニュー糖、シナモン・スティック、おろしたレモン皮(ゼスト)、クローブを入れ、沸騰するまで加熱する(写真2)。沸騰したらそのまましばらく煮立て、アルコール分をとばす。あまり長く煮立てているとワインの香りまで飛んでしまうので注意。



4.3.の中に洋梨を重ならないように並べて入れ、弱火でゆっくり煮込む。スプーンを使ってときどきワインを洋梨の露出している部分にふりかけ、色むらができないようにする(写真3)。梨の下を向いている面に色がついて来たら、フライ返しなどをつかって慎重にひっくり返す(写真4)。赤ワインの色はまださほど染みていないがかまわない。

5.30分ないし40分すると(洋梨の熟れ具合による)、洋梨が軟らかくなってくるので、竹串などで刺してみる。竹串がスーと通るようなら、鍋を火からおろし、そのまま冷ます。あまり長く煮すぎると容器に移すとき形が崩れてしまうので、煮すぎないように気を付けよう。粗熱が取れたら煮汁ごとガラス容器に移し、冷蔵庫で冷やす。冷蔵庫で冷やしている間に色はどんどん濃くなってくる。洋梨は、出来上がりよりも、1日ないし2日ぐらいたってからの方が、ワインの風味が落ち着いてより美味しい。

メモ
[パンナコッタ]
バニラ・ビーンズがなくても、バニラ・オイルで十分香りは出る。バニラ・エッセンスは熱に弱いので避けること。

[洋梨の赤ワイン煮]
洋梨を選ぶときは熟れ具合が重要。若すぎるとワインがしみ込まず風味がつかない。完熟だと、煮ているうちに崩れてくることがあるので、なるべく完熟少し前のものを選びたい。洋梨の品種はバートレットやル・レクチェなどが向いている。ラ・フランスの場合は、木熟の黄色味を帯びたもの以外は避けた方が無難。洋梨をパンチェッタと合わせるときは、煮込みに使う赤ワインはなるべく甘口で酸味の少ないものを使う方がよい。